先日大阪家庭裁判所で、ハーグ条約に基づく子の返還請求調停事件が同席でなされ、当日合意が成立しました。
欧米では同席調停が当たり前、だから日本でも同席調停をすべき、ということをいう人もいますが、私は、こういう議論の立て方で何かがうまくいくの、かかなりあやしいと思っています。
先日経験した同席調停の事案は、その前日まで調停委員が双方から別々に話を聞くというスタイルで調停をしていたのですが、1期日に数時間かけて、何の進展もないどころか、調停委員にろくに話もさせてもらえず、ほとんどの時間待合室にいる、ということを繰り返していました。
この状況の改善を求めたところ、裁判官から双方代理人に対して、同席(双方当事者もそれぞれの弁護士も全員)調停の提案があり、双方代理人がこれに応じて同席調停となりました。
そのあとは、調停委員会はほとんど口をはさまず、当事者間で事前に提出していた条項案を検討し、修正を加え、双方が譲れない事項については折衷案を作り出すという作業となり、使用言語は日本語に限定されず、当事者双方が英語で直接対話をする場面もありました。
代理人を通じてのやりとりよりも、双方の意見が、特に子どもたちの教育方針について、一致していたのには軽い驚きを感じました。また、相手に対して抱いているわだかまりを直接伝え、それについて相手から直接説明を聞いて誤解が解けたり、と和解条項として文章にされたこと以上にこの同席調停には大きな収穫があるように思いました。
当事者双方に相手に対するリスペクトがあったこと、いずれも子どもたちの教育に熱心で子どもたちの将来についての考え方が一致していたこと、双方代理人が信用のできる弁護士であるうえ、いずれも交渉に長けていたこと、そして現実的な要素として、当事者に子どもたちが双方の親の間を行き来するための費用を支払う経済力があったこと、が同席調停が建設的で創造的な役割を果たせたことの要因だと思います。
この同席調停をした感想としては、どんな事案でも同席調停でうまくいくということはないだろう、むしろ、事案を選べば同席調停は期待した以上の効果をもたらすと考えるべきだろう、と思いました。